犬のデキモノ~赤い皮膚腫瘤~

2017/10/28
皮膚腫瘤の細胞診

体の表面にできる『コブ』『できもの』『腫瘤』『はれもの』といった類についての話です。

皮膚腫瘤として診察中に聞かれる以下の内容で書いていきます。

1.できものがある!?

2.ガンですか?

3.治療できますか?

4.赤いの、やわらかいの

 

__________________________

 

1.できものがある!?

撫でていたら、ポコッとしているものが触る。

見た目で腫れている。

だいたい腫瘍のことがおおいのですが、皮膚炎(ニキビ、かさぶた、虫刺され)のことも多々あります。

まずは、腫瘍なのか否かを診断することから始まります。

自己判断せず、何か見つけたら、気軽に相談していただけるとうれしいです。

 

余談ですが、たまに『皮膚炎ですね♪』と伝えると、『あらやだ、そんなことで見せに来てすいませんねえ』って言われる方もいます。

安心しての社交辞令なのかな、とも思われますが、もっと気軽に診せていただける環境を作っていかなければと思う次第です。

何かするなら、早いに越したことはないですから。

 

__________________________

 

2.ガンですか?

犬の体表にできる腫瘤(できもの)の8割は良性とも言われます。

猫は逆に8割悪性です。

この割合って結局は確率論なので、悪いものは悪いし、良いものは良いしで2者択一です。

では、結局どうなのって事が一番気になるところですが。

教科書的には見た目で判断してはいけませんとなっています。

小さいから平気とか、痛くないから平気とか、そういったことはありません。

見た目で判断でなく、手順を踏むことが大事です。

もちろん、経験的に問題ないなって思うときもありますので、その時はそういった話し方もしますが。

 

__________________________

 

3.治療できますか?

治療するには良いものか、悪いものかはっきりさせることが必要です。

悪いものならさらに、何腫瘍なのかをつきつめます。

で、選択肢が3つです。

 

a.切除

メリットは

良性なら、切り取って治るので根本的な治療になる。

切り取ったコブで『病理検査』を行うことで良悪が確定する。

何腫瘍かもわかるので次の治療の選択肢が出せる。

 

デメリットは

手術になる事。

 

 

b.細胞診

注射器でコブの中身を吸い上げて顕微鏡でのぞく検査です。

メリットは

大した負担なく、簡単に行えること。

麻酔がいらない。

良さそうか悪そうか、だいたいの見当がつく。

 

デメリットは

確定できない。

 

 

c.要経過

仮診断をして、どうなるか予想を経てます。

予想通りの経過をたどるか診るやり方です。

 

メリットは

費用がかからないこと。

生涯なにも変わらなければ、良性だったであろうと確定されること。

 

デメリットは

悪性であったときに後手に回る。

手遅れになる可能性。

 

 

どの選択肢にしても、

『なぜそうするのかをはっきりさせてから進める』

ことが大事です。

 

__________________________

 

4.赤いの、やわらかいの

最後に経験則な話です。

 

赤いできものがある。

さて何だろうといったときに、2つ考えられます。

一つは肥満細胞腫という悪性腫瘍です。

もう一つは良性腫瘍です。

若い子なら組織球種、年経ていれば基底細胞腫(呼び名が変わったと思いますが昔ながらの呼称にて)です。

先に書いたように、見た目での判断はできないので、この場合細胞診がほぼ確定できるので有効になります。

 

 

やわらかいもの。

わりと多くみられるコブの手触りではないかなと思います。

脂身のようなフニャフニャ感のあるコブです。

同じように2つ考えられます。

一つは、やはり肥満細胞腫です。

もう一つは良性の脂肪種になります。

これも細胞診がはっきりさせやすいです。

 

このやわらかいコブは、『なぜそうするのかはっきりさせずに様子見』を指示されて、不安だからとセカンドオピニオンを求められた時に散見されることが多いです。

たいがい脂肪種であることが多いですが、残念ながらってこともあります。

 

『なぜそうするのかをはっきりさせてから進める』

何でもかんでも検査検査では、飼い主さまにも動物にも負担になります。

様子見ることがベストかなって提案をすることも多々あります。

どちらにせよ理由を大事にした説明、選択を心掛けて診るようにしています。